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「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」
発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第22回の質問は「仲良しでもないのに、持ち物や髪型、しゃべり方までマネしてくる子がいます。なぜ?」です。
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【Q】仲良しでもないのに、持ち物や髪型、しゃべり方までマネしてくる子がいます。なぜ?
【A】それは、その子にとってあなたが、信頼できる人やあこがれの人だからです。
川にかかった橋を渡るとき、あなたは安心して渡れるでしょうか。私は高所恐怖症で、高い所に張られた吊り橋であると、怖くてとても渡れません。勇気を振り絞って恐る恐る渡っていると、どうしても“へっぴり腰”になってしまい、笑われてしまいます。
よく考えてみると、安心して橋を渡れるというのは当たり前のことではないのです。文明が発展する前の時代では、橋などいつ切れて落ちてもおかしくないものでした。文明の時代になって落ちる確率は低くなりましたが、それでも世界では老朽化で突然落下する橋が毎年1つ2つ報告されています。
危険性がゼロではないのに安心して橋を渡れる理由は、私たちが他者をマネする動物だからです。大勢の人が橋を渡っていれば、その橋は安全なのだろうと認識して、自分も安心して橋を渡ることができるのです。
世の中に存在する橋全般で考えると、「橋なんか、いつ落下してもおかしくない」という考えは間違いではありません。しかし、今、自分が渡っている橋が落下する確率で考えると、その可能性は低いことがほとんどです(明らかに危険な橋でなければ)。ですから、「皆が渡っていれば、自分もそれをマネして渡っても怖くない、安全なはずだ」という心の働きは、余計な心配を減らし、それによって行動がスムーズに行われる効果があるので、それなりに便利なのです。
一方、チンパンジーは人間ほど他者をマネしません。他者の行動を模範にせず、自分の本能的な判断を優先します。ですからチンパンジーの場合、皆が吊り橋を渡っていても、怖くて渡れない私のような個体が一匹だけいるという事態はよくあります。マネをしない動物は、他者の行動から学ぶことができません。人間が文明を作り繁栄できた主な要因は、この「他者をマネできる能力」なのです。