※写真はイメージです (GettyImages)
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虐待が疑われるグループホーム内のやりとり(録音記録から抜粋 週刊朝日2020年9月4日号より)
虐待が疑われるグループホーム内のやりとり(録音記録から抜粋 週刊朝日2020年9月4日号より)

「ブラックボックス」化した高齢者施設で、おぞましい虐待が起きていることが内部告発で明らかになった。おでこにたんこぶ、顔にあざ、大腿骨骨折で入院などの異変に気づいた職員が音声を録音し…。新型コロナ対策で家族の面会を制限している施設で何が起こっているのか──。

【録音記録】「ぶん殴るよ」…虐待が疑われるグループホーム内の驚きのやりとりがこちら

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 自粛生活の中、厳密な感染対策を長期間強いられている職員のストレスがたまっていることも無視できない要因だ。

「クラスターを起こしてはいけないと、頻繁に消毒をしています。マスクは使い回し、グローブは支給がないストレスもあります」(内部告発者である職員の木村俊子さん[仮名])

 実際、職員Xが利用者に「余計な仕事を増やさないで」といらだちをぶつける録音も残っている。

 深刻なのは、施設側が問題を放置していることだ。この間、異変に気付いた一部の職員が施設の幹部らに複数回にわたり報告したが、内部で調査が行われることも、改善策が講じられることもなかったという。

「虐待が行われていることは、スタッフみんなわかっていたと思います。ある上司は『利用者を引っ張っていくから、皮膚がむけてしまうんだと思う。あの人が夜勤のときばかり事故が起こる。所長にも言って注意しているけど……』と言っていたけれど、結局、具体的には動かなかった。別のチーフは利用者がけがをした申し送りを受けたとき、『このけが、すごいでしょう』と笑っていたんです」(もう一人の内部告発者である職員の吉田晴美さん[仮名])

 もはや内部での解決は不可能と感じた吉田さんらは7月、グループホームを監督する立場にある江戸川区に通報した。同区の介護保険課は本誌の取材に「通報や調査の有無については答えられない」としているが、内部告発者によると、区は8月から職員への聞き取り調査を始めている。

 また、虐待を受けた入居者女性の家族の一人は今回の事態を知り、被害届の提出を念頭に警察に相談するつもりだという。

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