登校初日、半年ぶりに家族以外の人と触れ合う興奮に頬を染めて帰ってきた娘を見て、「いろいろ不安だったけれど登校させてよかった」と心から安堵しました。同時に娘の姿が誇らしくも見え、この雄姿をフェイスブックで友だちや親せきに見てもらおうと思い立ちました。娘の写真を撮り、フェイスブックを開いたのですが──。はたと指が止まりました。そこには、友だちの悲痛な叫びがあふれていたからです。
「バーチャル授業で『学校再開』なんて言われてもね。うちの子、今日も『COVIDはいつ終わるの?』『COVIDなんて大キライ』ってまたいつもの言葉を口にしてる」
「子ども3人、家にはパソコン1台。1台で3人のバーチャル学習を回すなんてムリ! 3人分の時間割を管理するだけで、頭がおかしくなりそう」
「我が家は高齢の母親がいるから、迷わずバーチャル授業を選択。でも小1の息子は初日からログインに手間取るし、午前中の授業が終わったら息つく間もなくランチだし、こんな調子で私の在宅仕事、続けられるかしら」
バーチャルにせざるを得ない人も、望んでバーチャルを選んだ人も、悩みのただ中にいました。それは、登校を選んだ我が家とて他人事ではありません。もし学校で感染者が出たら、我が子が感染したら、もっと最悪の事態が起きたら──。それでも、「登校させてよかった」と心から言えるだろうか? まさか、子どもを学校へ送り出すことを手放しで喜べなくなる日が来るなんて、思ってもみませんでした。今は親の不安を子どもに見せないよう努め、感染防止に励むしかありませんが、嵐の中を小舟でさまようようなこの日々は、一体いつになったら落ち着くのでしょう。
◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi
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