横浜市立大学市民総合医療センター・リハビリテーション科准教授の若林秀隆医師は言う。
「食事は栄養を改善して体力を保ち、病気からの回復や再発予防に役立ちます。さらに口から食べることが楽しみや生きる意欲になり、介護をする家族の励みにもなります。しかしのみ込む力が落ちた人は窒息や誤嚥性肺炎のリスクをともなうので、工夫が必要です」
食べ物は軟らかさや大きさ、とろみなど食形態を変えることによってのみ込みやすさを調節できる。とはいえ、現在残っているのみ込みの機能を大きく下回るような軟らかすぎるものばかり食べていると、機能が十分使われずにさらに低下してしまう。
また、たとえばパーキンソン病の人は細かい動作が難しく食べ物を口の奥に送り込みにくいなど、病気ごとの特徴もある。現在の状態を正確に評価し、機能を落とすことなく安全に食べられるものを探すことが大事だ。
食べるときの姿勢が悪いと誤嚥しやすくなるので、椅子に座れる人は足を地面につけ背筋を伸ばす。バランスが悪い人は軽く背もたれに寄りかかる、からだの脇にクッションを入れるなどして姿勢を安定させる。ただし病態によっては誤嚥しにくい姿勢が違うこともあるので、医療者に相談を。
食事は少しずつ、ゆっくり食べる。介護者が食べさせる場合は、口の中の食べ物をのみ込んだかどうか確認してから、次の食べ物を口に入れるようにする。
また、テレビを見ながらなど意識せずに食べていると、大きな固まりのまま口に入れたり勢いよくのみ込んだりしがちになる。とくに認知症などで注意力が低下している人は、テレビを消し食事に集中したほうが誤嚥は起こりにくい。
食べること自体がのみ込む力をつけるトレーニングになるが、嚥下機能訓練(イラスト参照)を加えると、さらに効果は高まる。
若林医師は言う。
「のみ込みの状態は個人個人違うだけでなく病気の進行などで変化するので、リハビリ科専門医や歯科医師、言語聴覚士などに指導してもらうといいでしょう」