その陰には多大な努力と、ちょっとしたコツがあります。
これから当てようとする学生の名札をチラ見し、自分のおぼろげな記憶とマッチさせたあと、何気なく逆側の学生達に目をやり、ワンテンポをおいてから、元の学生の顔を見て、名札を見ずに名前を呼ぶのです。その時は自分の記憶の迷いを払いのけ、自信満々にその学生の名前を発するのです。
なぜ、これだけの努力をしてまで教授は学生の名前を覚えようとするのでしょうか?
あるいは、覚えている振りをするのでしょうか? それは、教授と学生という師弟関係にあろうとなかろうと、名前をファストネームで呼び合うことが、人間関係の根底にあるという根強い考え方があります。
事実、久々に会った知り合いが、あるいは、会ったばかりの相手が、自分の名前を親しげに呼んでくれたら、悪い気はしないでしょう。むしろ、相手に対して、うっすらと好意を抱くのではないでしょうか。
相手は、きっと自分に興味を持ってくれているか、好意を持ってくれている。あるいは、自分は相手に対して、印象深い「何か」を持っているのかもしれない。いろんな理由が頭をよぎるでしょう。そして、相手が自分の名前を覚えてくれているのなら、自分も相手の名前を覚えようという気持ちが湧きあがります。
結局、自分が先に相手の名前を覚えるか、相手が自分の名前を先に覚えるかのどちらかです。もし、自分を相手の記憶に残したいと思うのであれば、まずは自分が相手のことを記憶に留めることが大事ということです。
■相手の名前を覚える3つのコツ
HBSの教授に限らず、できるビジネスパーソンは、人の名前を覚えるのが得意です。
そして、そういう人に限って、他人から尊敬される実績を有していることが多いのです。尊敬される人でありながら、自分の名前を覚えてくれるのだ、と私が人気教授に抱いたような感激、期待値超えによって、その人への評価はさらに高まります。
結果、その人の人脈は広がっていきます。こんなオマケを期待して、他人に関心を持つのは、やましい気もしますが、結果的にお互いの距離が縮まるのであれば、winwinといえます。