前防衛大臣・浜田靖一

――韓国は北朝鮮から砲撃された13分後に反撃を始めました。もし、日本がミサイル攻撃されたら、同じように応戦できますか。

 日本は専守防衛で、米国みたいに相手国の基地を攻撃する能力がないので、できません。日米安保条約があるので、日本に代わって米軍が応戦することになっています。

――米国は、日本がどういう状態になれば「有事」と判断するんですか。

 安保条約では〈両国が共同して日本防衛に当たる〉という方針が定められているだけで、こういう場合はこうする、という具体的な確認はとってないんです。尖閣の衝突事件でも「日本国の施政の下にある領域」という安保条約第5条の要件を満たしているかどうか確認していましたよね。そういうもんなんですよ。
 とはいえ、有事で緊張感が高まってきたら、米国は動いてくれるはずです。在日米軍がいるからね。米国は、日本にとっては安全装置なんですよ。「出ていけって言うんだったら、自前の軍を作って自分たちでこの国を守る覚悟があるのか」っていう議論はするべきだと思いますよ。

――日本が単独で応戦することはないんですか。

 自衛権があるので法的にはOKですが、日本はそもそも応戦できる武器を持っていない。敵基地に届
くような長距離のミサイルはないんです。

――ほかに敵基地を攻撃する方法はありますか。

 F15には機銃やミサイルが付いているから、敵を撃つことはできる。自衛隊員は、〈危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め〉るという宣誓文を読んで入隊するんです。「突っ込め」と命令すれば自衛隊は行きますよ。そんな訓練はしてないから、たどり着けない可能性もあるけどね。

――それって「片道切符」ですか。

 そうですね。

――どういうときに「防衛出動」が行われるのですか。

 ミサイルを撃ち込まれた場合は、犠牲者が出てからじゃないと判断できません。例えば、北朝鮮から弾道ミサイル「ノドン」を1発撃たれて着弾しても、実験や人工衛星の失敗だと言われたら、防衛出動はできない。相手国が意図を持って軍事行動を起こしたときじゃないと、下令できないんですよ。がんじがらめでハードルがすごく高い。相手の意図を確認するのに時間をとられて、その間に2発目が来たら、また犠牲者が増えるんです。

――1発ではダメでも、3発撃たれたら?

 それはさすがに意図があるでしょう。でも、1発目に核が積んであったらどうすんだって話ですよ。それだけで都市が一つ丸ごと飛んでしまう。

――「座して死を待つ」ってことですか。

 これまで政府は「座して死を待たない」ということを答弁してきましたが、そのたびに「また侵略戦争をするのか」という反論が出て、曖昧になっている。でも、本当は相手に撃たせないことが重要なんです。
 ただ、ノドンは移動式の発射台だから、事前に把握するのは難しい。地対空誘導弾PAC3を全国16カ所に配備しているけど、それじゃあ全然足りない。相手が何発持ってるかもわからないんですから。

――防衛出動は過去に一度もありません。
 使ったことがないからサビついてるけど、状況さえ整えば、やらないといけない。まあ、今の政府には自衛隊を「暴力装置」って言う人もいるくらいだから、有事になったとしてもムリでしょうけどね。(笑い)

週刊朝日