(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
『新「名医」の最新治療2020』より
『新「名医」の最新治療2020』より

 多くの日本人が悩む肩の痛み。その中でも、関節の軟骨がすり減り、骨同士がこすれ合うことにより、骨が変形して痛みを発症するのが変形性肩関節症だ。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、高齢化で増加している変形性肩関節症の症状や原因、治療法について専門医に取材した。

【データ】「肩の痛み」かかりやすい性別や主な症状は?

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 肩関節は、肩甲骨側の受け皿(関節窩)に、上腕骨のボール状の骨頭がはまった不安定な構造をしている。

 関節の動きを滑らかにしている軟骨がすり減り、骨同士がこすれ合うと、骨が変形して変形性肩関節症を発症する。強い痛みや腫れ、肩の動きの障害などが表れ、X線検査をすると上腕骨と肩甲骨の隙間がなく、上腕骨の骨頭の変形が見られる。

 変形性肩関節症は、高齢化で増加しているが、骨折や脱臼などの外傷後に生じる場合や、それ以外の原因でも起こる。あさひ病院スポーツ医学・関節センター長の岩堀裕介医師はこう話す。

「はっきりとした原因疾患がない、老化による一次性の変形性肩関節症は頻度が高くありません。ほとんどは何らかの原因疾患による二次性で、その原因のうちもっとも多いのが肩腱板断裂です。肩腱板は不安定な肩関節を安定させる役目があり、切れると骨がずれてこすれ合い、変形します」

■痛みの緩和とリハビリが有効

 変形性肩関節症の治療は、まず初めに、薬物療法、リハビリ療法などの保存療法をおこなって痛みと炎症を緩和する。薬物療法は、非ステロイド性抗炎症鎮痛薬などの内服あるいは外用剤を処方する。痛みがかなり強い場合、関節内の炎症を抑えるため、ステロイド薬や関節の潤滑油である滑液に含まれるヒアルロン酸を関節内に注射することもある。痛みが軽くなってきたら、リハビリ療法を開始する。船橋整形外科病院スポーツ医学・関節センター長の菅谷啓之医師は次のように言う。

「不良姿勢を正し、肩甲骨や胸郭、骨盤の動きを改善するリハビリ療法を受けることによって、肩の動きがよくなり無症状で日常生活が送れるようになる症例も少なくありません」

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