だが、橋本と林はともに2008年から在籍3年(※期限付き移籍も在籍年数に含む)で退団(橋下はカップ戦2試合ベンチ入り、林はリーグ戦2試合とカップ戦4試合に出場)。小島も2011年から在籍4年間でリーグ戦出場19試合と定位置を掴めずに徳島に期限付き移籍した後、2015年に一旦は復帰するも半年後にはJ2・愛媛に完全移籍した(現在はJ2・千葉に所属)。そしてルーキーイヤーの2016年開幕戦でベンチ入りを果たした伊藤も、その後はリーグ戦1試合、カップ戦1試合に出場したのみで出番がなく、在籍1年半でJ2・水戸へ期限付き移籍することになった。
高体連出身者がマイノリティであるが故に注目され、結果を残せずに「浦和の高体連出身者は育たない」となった。この“悪評”を覆すためには、今季2年半ぶりに浦和に復帰した22歳の伊藤に加え、今年からプレーする武田英寿と入団が内定している藤原優大の“今後”が鍵を握る。
武田と藤原は、ともに2018年に高校選手権を制した青森山田高出身で、U-18代表にも名を連ねた期待の逸材。武田は抜群のサッカーセンスとインテリジェンスを持つ左利きゲームメーカー。藤原は高い身体能力を武器にした競り合いの強さと素早いカバーリングを見せるセンターバックで、確かな足元の技術でボランチなどの複数ポジションでプレー可能だ。まずは今季、15節までに2試合に途中出場したのみ(プレー時間は計34分)の伊藤が、自身の攻撃性能を存分に発揮してチャンスを掴むこと。そして武田が将来的に背番号10を背負ってゲームを支配し、藤原がDFラインを統率するようになれば、浦和レッズに新時代が到来したと言える。
日本のサッカー界でよく議題に上げられるのが、「クラブユースと高体連のどちらが上か」の問いである。テクニック面ではユース出身者に軍配が上がるだろうが、高体連出身者には部活動の人間教育を通じて得た強いメンタリティーを持つ選手が多い。おそらく最適解は、「どちらも必要」なのだろう。今後もユースから優秀な人材を昇格させながら、高体連から傑出したタレントを見つけ出して一流に育て上げる。ユース出身者と高体連出身者の力がピッチ上で融合した時、より魅力的で、力強い集団が出来上がるはず。それは浦和に限らず、多くのJクラブの命題であり、「高校サッカー」という独自の文化を持つ日本サッカーの強みであるはずだ。