低気圧がくると頭痛が起こる、雨が降ると神経痛がひどくなる……。天気の変化で体調不良が起こる人はけっこういるのではないでしょうか。そしてこうした天気の変化で歯周病も悪化することがあるらしい、という話を聞きました。果たして本当なのでしょうか。『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか? 聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中の歯周病専門医、若林健史歯科医師にうかがいました。
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天気の変化が歯周病に影響する……。ちょっとびっくりしてしまう話ですね。台風シーズンですから、気になる人もいるでしょう。
実はこれは本当の話です。2015年に岡山大学歯学部予防歯科学の森田学歯科医師らのグループが、「慢性歯周炎(歯周病)が急性化するのは気象変化後1~3日である」という研究論文を発表しています。つまり、科学的に証明されているのです。
研究では岡山大学病院を受診した、「安定期にある慢性歯周炎患者」延べ2万人のうち、腫れや痛みなどの急性期症状を発症した患者さん(発症率1.87%)を対象にしています。このうちプラーク(歯垢)の付着など、歯周病の悪化に歯科関連の要因が引き金になっていると考えにくいケースに注目し、天気のデータとの関連を調べたところ、「気圧が急激に低下した」「1時間ごとの気温上昇が大きかった」日の1~3日後に発生しやすいという結果が得られたのです。
歯周病の原因は口の中の歯周病菌であり、細菌の塊であるプラーク(歯垢)です。だとすればなぜ、天気の変化で歯周病が悪化するのでしょうか?
実は歯周病の患者さんの場合、きちんと歯みがきができているのにある日突然、歯ぐきが急激に腫れて痛みが起こり(歯周病の急性発作といいます)、クリニックにかけこんでくることがあります。
患者さんに思い当たることはないかうかがうと、「仕事が忙しい」「からだがとても疲れている」「寝不足(あるいはまったく寝ていない)」などのケースが多いのです。