「繊細さん」をご存じだろうか。5人に1人が当てはまると言われ、細かいことが気になりすぎるゆえに生きづらさを感じる人も多いが、近年では感覚の鋭さを「強み」に変える生き方も模索されている。「繊細さん」が幸せをつかむ方法とは何か。当事者や専門家に取材した。
【実はあなたもHSPかも…こんな悩みがある人は「繊細さん」?】
「繊細さん」は、1990年代後半にアメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱したHSP(Highly Sensitive Person)という概念が基になっている。
HSPとは、些細なことを敏感に感じ取る特性を持った人のこと。周囲の人のちょっとしたしぐさや表情、場の雰囲気などから「相手の気分を害したのではないか」などと過度に気に病んでしまう、大きな音や光などの刺激に弱く、ストレスを受けやすい、などといった特徴がある。ADHD(注意欠陥・多動性障害)などのように障害とはみなされず、あくまで気質の一つとされる。
『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』(飛鳥新社)の著者でHSP専門カウンセラーの武田友紀さんはHSPを「繊細さん」と呼ぶことを提唱している。
「HSPは日本では『敏感すぎる人』などと訳されますが、ただ繊細であることを、『~すぎる』と表現するのは不適切だと思い、親しみを込めて『繊細さん』と呼んでいます」
武田さんはHSPの当事者でもある。自覚したのは、多忙による休職がきっかけだった。
「メーカーで技術者として開発を担当していたのですが、忙しすぎて休職者が続出するような職場で、私も体調を崩し休職しました。当初は自分が悪いのだと自責の念に駆られたのですが、休職中に自分はHSPだと知り、生き方を変えることができました」(武田さん)
同じ環境で仕事をしていても、さまざまな要因からストレスを受けやすい「繊細さん」とそうでない人とでは、感じる疲労感がまったく異なる。そう理解した武田さんは退職を決意し、カウンセラーの道へ進んだ。視点を変えれば、「繊細さん」は他者への共感性が高く、些細なことにも気がつく能力が高いとも言える。武田さんにとって、カウンセラーは適職だった。