ここで特にポイントなのは、正しい鉛筆の持ち方は正しいおはしの持ち方とほぼ同じという点です。生きていく中で字の書き順なんかより、おはしを正しく持てるかという方が、ずっと指摘される頻度が高いものです。

 日本人として、食事のおはしの作法は大多数の人が厳しくチェックしています。気にする人は本当に気にするところなので、おはしの持ち方に通じる鉛筆の持ち方は、正しく覚えておくに越したことはありません。

 筆圧も鉛筆の持ち方も、年を取れば取るほど自分のクセがなじんでしまい、矯正するのが難しくなります。私も、何度か鉛筆の持ち方を直そうと挑戦はしたのですが、正しい持ち方をすると極端に書くスピードが遅くなり、字もガタガタの下手くそになります。

 ですから結局は途中で「まぁいいか」と諦めてしまい、30年以上続いている自分の握りやすい持ち方に戻してしまいます。これら二つに関しては、最初から気をつけておくべきです。
 
 さて、字を書くときの筆順ですが、私は「問題集でバツをつけるほど、こだわらなくてもいいものではないか?」と思っています。

■書き順が違くても、字が奇麗な人の文字は美しい
 
 小さいころに「筆順どおりに書くことで、最も美しい字が書ける」と教わったのですが、大人になった今振り返ると「別にそんなことないな」と思うのです。書き順があっていようが間違っていようが字が奇麗な人の字はどれも美しく、下手な人の字は下手なものです。

 うまい下手は筆順ではなく、習字や硬筆を習っていたかどうかといった要素のほうがずっと強く影響します。
 
 それに、実は、漢字の筆順は一通りだと決まっていないのだそうです。たとえば、「上」という漢字の一筆目は、「|」からでも「―」からでも正しい書き方になります。旧文部省による『筆順指導の手びき』では前者が正しいとされているのですが、第五国定国語教科書の教師用所定収では後者が正しいとされており、なんと、きちんと統一されていないのです。

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