そもそも漢字は中国から伝わってきたのに、同じ漢字でも中国とは異なるものまであります。筆順はそれくらい「あいまいなもの」で、決して絶対的ではないのです。

 習字の「くずし字」を書くためには、絶対に筆順が大切と主張する人もいます。そもそも習字とは「師のまねをして書く」ものですから、師と同じ順で書かねばならないのが道理です。ただ、それら書の流派により、筆順が異なっているところが問題なのです。

■流派の筆順にしないならば切腹する!?

 文部省が『筆順指導の手びき』をつくる際、多くの書の流派が集まって議論したそうです。そのため話し合いはもめにもめ、考えていたよりかなり長い時間がかかり、そこである巨匠が「自分の流派の筆順にしないのならここで切腹する」と言い出した、なんてエピソードまであります。

 さらには、そんな『筆順指導の手びき』も、正式に文科省が出したものではなく国語課の役人の私的な出版物だ、とも言われているのです。

「選択肢がありすぎると、どれにするか選べなくなる」という、「選択のパラドックス」が起きる可能性を考えると、正しいとか正しくないとかは関係なく、「お手本の筆順」はあったほうがいいとは思います。しかし、いまいち一貫していない筆順というものを、子どもたちに強いて点数までつけるくらいなら、もっと先に別のところを注意したほうが後々有意ではないか、というのが正直な気持ちです。

  まあ、息子のあまりにもひどいバランスの字を眺めていると、筆順よりも、そして筆圧や持ち方を考えるよりも、まずはちゃんと読めるような字を書けるようになることが大切だな、とは思いますけれど。

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