コロナ禍では、意外なところで岩井監督に刺激をくれた存在があった。

「ここ半年ぐらいは、ユーチューバーから元気をもらっています(笑)。彼らって、コロナの影響を全く受けていないんですよね。再生数を稼ぐために、毎日動画をアップしていて、カメラと自分だけで撮れちゃうから、密にもならず、こんな状況なのに、普通に元気でやれている。プロとして映像やっている我々がうなだれている場合じゃないなと思います」

「ユーチューバーはタフだ」と気づき、何かを学ぼうとしている。監督自身、そういった“新しい価値に気づける感覚”は失いたくないようだ。

「時代とともに変わっていく価値観に気づける嗅覚さえあれば、映画作りもまだなんとかなるかな。そこに鈍感になってしまったらいよいよ“やばい”と思うけれど(笑)」

(菊地陽子、構成/長沢明)

岩井俊二(いわい・しゅんじ)/1963年生まれ。宮城県出身。95年に「Love Letter」で長編映画デビュー。日本のみならず中国・韓国でも絶賛され、アジア各国に岩井ファンが生まれた。代表作に「PiCNiC」「スワロウテイル」(ともに96年)、「リリイ・シュシュのすべて」(2001年)、「花とアリス」(04年)、ドキュメンタリー「市川崑物語」(06年)、「リップヴァンウィンクルの花嫁」(16年)など

週刊朝日  2020年9月25日号より抜粋