森友・加計疑惑のとき、真相究明のために当事者たちに取材することを怠った。当事者とは、佐川宣寿理財局長であり、麻生太郎財務相であり、籠池泰典氏などである。

 そして昨年11月、共産党が桜を見る会の実態を露呈させた。私は、とんでもない税金の私物化だと憤り、安倍首相に次ぐ自民党の幹部2人に、「なぜ、こんなとんでもないことを起こしたのか」と問い、「かつての自民党ならば、実力者の誰かが、安倍さんやめなさいと言い、安倍氏は素直だからやめたはずだ。だが、誰も何も言わない。なぜこんなことになったのか」と糾明した。すると、2幹部は「反論も弁解もできない。内閣が長く続きすぎて、みんなの神経が緩んでしまったのだろう」と答えた。

 本来ならば、森友・加計疑惑の段階で党内から「安倍辞めろ」の声が高まり、安倍首相は辞めたはずである。だが、選挙制度が変わったせいもあり、自民党国会議員の誰もが安倍イエスマンになり、安倍内閣、そして日本の政治にはまったく緊張感がなくなってしまった。これが最大の問題である。

週刊朝日  2020年10月2日号

■ 田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 

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