「いま木ノ本~敦賀~今庄間の旧線跡はほとんどが道路に転用され、トンネルもほぼそのまま残り往年の雰囲気を味わうことができる。また、雪除けなどの設備がそのまま活用され、スイッチバックの様子が確認できるところもあります」
福島県内を走っていた、沼尻鉄道は、NHK朝の連続テレビ小説「エール」で注目が集まる廃線だ。主人公のモデルとなった古関裕而(こせきゆうじ)が作曲し、丘灯至夫(おかとしお)が作詞して54年に大ヒットした懐メロ「高原列車は行く」の曲のイメージが、沼尻鉄道だった。
鉄道はもともと同県猪苗代町にあった沼尻鉱山の硫黄を運ぶことを目的に1913(大正2)年に運行開始。廃線となる68年までの55年間、川桁~沼尻の約16キロを結んだ。今、線路跡はほぼ道路となり、たどることができる。
地方だけではない。横浜や東京、大阪といった大都市にも廃線跡はある。
「汽車道&山下臨港線プロムナード」は、横浜に残る廃線跡だ。
桜木町駅前から赤レンガ倉庫に向かう「汽車道」と、赤レンガ倉庫と山下公園を結ぶ「山下臨港線プロムナード」からなる。
もともと鉄道と横浜港の結節点として明治末期から戦後にかけて整備されたが86年に廃止となり、今は遊歩道となっている。長さ約1キロ。みなとみらい21地区のホテル群や大観覧車を遠くに見ながら、海風に吹かれて歩くのも悪くない。
■できる限り事前調査を
より廃線歩きを楽しむにはどうすればいいか。最後に松本さんにアドバイスをもらった。
「旅は事前調査しすぎると現地で発見の楽しみを損なうこともありますが、廃線探訪はできる限り事前調査をしていくことをすすめます」
冒頭の信越本線の横川~軽井沢のように観光地化されたところはマップや説明が用意されているが、こうしたケースは稀有。現地に説明がない廃線すらあり、耕作地を横切っていた線路では一面が田畑になっている場合もある。
「最低でも、現役当時のルートと現在の地図とを見比べ、廃線跡の見当をつけて出かけてほしい」(松本さん)
ただ残念ながら、新型コロナウイルスの収束はもう少し先。廃線歩きは、感染対策もしっかりして出かけよう。(編集部・野村昌二)
※AERA 2020年9月28日号