日本は本格的な高齢化社会を迎える。国立社会保障・人口問題研究所によると、65歳以上の高齢者人口は、2010年に23%だったが、2030年には31.6%に達する見通しだ。ほぼ3人に1人が高齢者となる。
さらに、離婚や未婚率の高まりから、高齢者の一人暮らし世帯数が増加。世帯主が65歳以上の世帯のうち、2010年に29.7%だった一人暮らし世帯の割合は、2030年には37.7%と予想されている。高齢者世帯の3分の1以上が一人暮らしとなる計算だ。そんな時代の高齢者がどんな生活を送るのか、シミュレーションしてみた。
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「王様、だーれだ」
2030年1月。桜井誠(65)は、高齢者合コン、いわゆる「終活コン」に明け暮れていた。きょうの終活コンの場所は、高齢者が夜遊びできる街として2年前に開発された新スポット「第3巣鴨」だ。
バツイチで独身。東京郊外の低層マンションで犬のタローと、気ままな一人暮らしだ。43歳のとき、リーマン・ショックのあおりで外資系証券会社をクビに。なんとか再就職はしたものの、給料は半減。カネの切れ目がなんとやらで、妻・恭子(64)に愛想を尽かされ、離婚届を突きつけられた。以来、恋人は何人かできたが、再婚はしていない。
寂しくない、というとウソになる。だが、周りには一人暮らしの友達や元同僚が多く、高齢者仲間と何かと忙しく遊んでいる。終活コンのメンバーは男女とも平均年齢オーバー60。先週参加した、「第2巣鴨」での男女500人ずつの「終活街コン」では、オーバー70もチラホラ見かけた。
「誠さぁ~ん、王様ぁ~」。選んだ割りばしの端に赤い印が付いていた。王様になると、参加者に何でも命令ができる。バブル時代ごろから流行したゲームだ。
1965年生まれの誠は、バブル全盛期の1988年入社組。当たり前だが、高齢者仲間も同じバブル育ち。華やかな時代をいまなお忘れていない。お酒を飲むと、この世代は、いつも大はしゃぎとなる。特に女性は元気だ。「60になっても女の子でいたい」なんてキャッチフレーズが、高齢者向けファッション誌の表紙を飾る。
「じゃあ、王様の命令!AがBの持病をばらす!」合コンはいつになく盛り上がった。王様ゲームに飽きると、宇宙エレベーターによる宇宙旅行や、幹細胞移植の若返り術、女性陣が化粧直しに立ったときには、男性陣だけで「ラブドール」の話に花が咲いた。
※週刊朝日 2013年1月18日号