シルバーの無塗装からブラックに着色することで、見た目の圧迫感や硬さがない。舞台でいう黒装束のような裏方ながら、引き締まったデザインに仕上がった。
以降、営団地下鉄の標準アイテム(銀座線1000系特別仕様車を除く)となったほか、同業他社も刺激を受け、その後登場した東武鉄道1800系1819編成、伊豆箱根鉄道5000形などに採り入れられた。
平成に入ると、ブラックピラーを採り入れた車両はさらに増え、特にJR東日本は窓の開け閉めを行う取っ手もブラックとする徹底ぶりだ。
■連続窓風に見せる工夫も
ブラックピラーの“進化版”といえるのが、ひとつの車両の側窓すべて、もしくは一部をブラックで囲い、連続窓風に見せることだ。
最初に採用したのは、富士重工業のレールバス車両LE-CarIIで、1984年にデモンストレーション用プロトタイプ車が登場した。路線バス車両のノウハウを鉄道車両に応用したもので、バス車体工場と鉄道車両工場が共同製作し、コストの低減を図ったのが特徴である。側窓は上段固定、下段は開閉できる。
車両の長さは大型観光バス並みの12メートル、もしくは若干長い15メートルで、鉄道車両としては短い。側窓をブラックで囲い連窓風にすることで、開放感があり車内を広く見せる、小柄な車両を大きく見えるようにしたのではないだろうか。
このタイプの車両は、国鉄・JRの特定地方交通線を第三セクター鉄道として引き継いだ企業の多くが導入した(樽見鉄道ハイモ180形、甘木鉄道AR100形など)。鉄道業界に新風を吹かせたが、一般的な鉄道車両に比べ、老朽化が早まる欠点もあった。
1985年2月に登場した東京都交通局上野懸垂線(上野動物園のモノレール)の30形では、大胆な使い方をした。前面のフロントガラス、車体側面の側窓とも“スーパースペシャルワイドビュー”なので、その周囲をブラックにまとめ、連続窓風に仕上げた。
同年7月に伊豆急行2100系「リゾート21」が登場。普通列車用の車両でありながら、沿線車窓の眺望に特化した仕様で、ジョイフルトレインや特急形電車と勘違いしそうなほど。先頭車の展望席は映画館のような座席配置となった。その部分の側窓および、車体側面の海側をブラックで囲み、連続窓風に仕上げた。