岸田さんが理想とするお金の使い道は、好きな人をギャハハ!と笑わせるためにポンとお金を出すこと。
「この人が心から笑うために100万円が必要だとします。『えっ、100万円?すぐ出すよ』くらいのお金を持っていたい」
では、書いたものが大ヒットして1億円が手に入ったら?
「本を学校に山ほど贈呈するとか。本を読んでくれた子どもたちが将来、何か書いてくれるかもしれませんよね。それか、『読者感謝祭!~9000万円バラまき企画~』なんてやってるかもしれません」
そう、岸田さんは自分で考えた企画を自分一人でやる。最近では6月に実施した文章コンテスト「キナリ杯」が、「らしさ」全開だった。
タイトルのキナリは自身のメディアサイト「キナリ」(フレーズは「事実も小説も『奇なり』」)から。主催・運営・審査のすべてを一人でやりきった初めての文芸賞だろう。
「みんなと同じように外に出て働けない、言いたいことが言えない、近くにいる誰にもわかってもらえなくてつらい、名前も知らない誰かに笑ってもらいたい、そんな人を応援したかった」
キナリ杯には4200作品もの応募があり、すべて自分で読んで選んだ53作を入選させた。賞金総額は当初10万円だったが、寄付が集まり100万円以上に。全額を賞金に充てたので、岸田さんの取り分はゼロだ。タダ働きでいいんですか?
「私がnoteで運営する『キナリ☆マガジン』(月額1000円、3~5本配信)の定期購読者が増えました。これだけで十分なメリット。
しかもキナリ杯がSNSを通じて目立ったようで、新聞社が取材に来てくれたりして、ネットの外側の人にも私の文章が届く道が少し開いたんです」
――続きはAERA増刊『AERA Money 今さら聞けない投資信託の基本』でーー
(構成・文/大場宏明、編集部・中島晶子、伊藤忍)

