■CT検査で確認 安全な手術普及
「ほとんどは、治療前のCT(コンピューター断層撮影)検査でインプラントの適切な埋入位置や角度、深度を確認し、治療計画を立てることで避けられます。近年は『サージカルガイド』というマウスピース型装置を使って、より安全に手術する方法も普及しています」(加来歯科医師)
インプラント1本の治療費は、一般的に40万円前後といわれている。さらにインプラントは自由診療で健康保険適用外のため、全額自己負担だ。経済的負担は少なくない。
ただし、インプラントは順調に経過すれば長持ちしやすく、ほかの残った歯に負担が少ない。また、しっかりかめるようになるため、「かむ力」をとり戻すことでの全身への好影響もある。総合的にみるとコストパフォーマンスにすぐれているといえるだろう。
インプラント治療は、00年代から普及しはじめ、現在65~79歳の約4%がインプラントを使用している(厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」)。インプラント治療を受けた患者のうち85.2%の人が「満足」「どちらかといえば満足」と答えていて、入れ歯やブリッジに比べ満足度は高い(国民生活センター、19年)。
「インプラントは手術が必須の治療のため、費用に加え、長い時間がかかります。手術のリスクもあります。これらの理由から受診をためらう患者さんが少なくないのも事実です。さらにインプラントに関する医療情報が氾濫しているため、正しい情報を求めている患者さんも数多くいらっしゃいます」(宮崎歯科医師)
こうした状況に、インプラント治療についてわかりやすい情報を提供する本が必要との声を受け、日本口腔インプラント学会が一般向けに刊行した公式本が『「かめる幸せ」をとり戻す』だ。同書には、インプラント治療の基礎知識から治療の流れ、治療費、治療中・治療後のトラブルとメインテナンス、歯科医師の選び方までわかりやすく丁寧に解説されている。ぜひ、「かむ力」をとり戻すための一助としてほしい。(ライター・中寺暁子)
※週刊朝日 2020年10月9日号
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