作家・室井佑月氏は、新型コロナの影響で本当に苦しむ人たちのために、税金が使われることを切に願う。
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9月25日付の「コロナ失職加速 6万人超」という朝日新聞の記事によると、「新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止め(見込みを含む)にあった人が、23日時点で6万439人となり、6万人を超えたと厚生労働省が24日発表した」という。
コロナの収束が見えないもん。雇う側がこのままではもう持たないと判断したのだろう。
そして、おなじく25日付の毎日新聞の社説に、「コロナ下の自殺 『安全網』をより細やかに」というものが載った。「警察庁と厚生労働省によると、今年の自殺者数は前年比で7月から増加に転じた。8月は1849人(速報値)に上り、前年の同じ時期より246人増えた」という。
自殺者数が増えた理由として、コロナでの解雇や雇い止め、資金繰りが悪化して廃業に追い込まれる経営者、公的な支援が足りず借金をして首がまわらなくなるなどの状況が考えられるだろう。
テレビのワイドショーでは、深くこのことに触れない。死ぬほど苦しい立場に置かれているおなじ国の仲間たちには触れない。「Go Toキャンペーン」はあれほど宣伝したのにさ。ま、あちらはふんだんに広告費までかけているから。でも、それも税金だ。
いつからかメディアは正しいことをしようとすることをやめた。自分たちが生き残るために権力に擦り寄り、それによってのおこぼれに期待する存在になり、あたしたちの方を見なくなった。
あたしはまだメディアが変わってくれると期待をしてしまう。この国で死ぬほど困っている人たちがいる、この事実をどうにかしてたくさんの人に知ってもらいたいからだ。
政治とは、あたしたちから吸い上げた税金を、それぞれに振り分けることだ。死ぬほど困っている仲間に、税金を使うことを拒む人間がいるだろうか? 多くは救いたいと思うはずだ。
たとえば、「Go Toトラベル」にかけるお金は1兆3500億円。このお金は、旅行へいかない人たちも払っている税金で成り立っている。