AI(人工知能)の進歩により、翻訳精度が向上している自動翻訳。ドラえもんの「ほんやくコンニャク」のように使える日は来るのだろうか。現在発売中の『AERA English 2020 Autumn&Winter』では、日本の自動翻訳技術の第一人者に、自動翻訳の最新事情について取材した。
* * *
音声や文章を入力するだけでAIが翻訳してくれる自動翻訳。それらを搭載した翻訳機やアプリを使ったことはあるだろうか。本誌のアンケートでは、約7割が使ったことがあると回答。一昔前は誤訳や不自然な訳文になることが多く、「いま一つ」のイメージが強かった自動翻訳だが、近年は翻訳精度が大きく向上している。
なぜ自動翻訳はここまで進歩したのか。自動翻訳技術の第一人者で情報通信研究機構(NICT)フェローの隅田英一郎さんによると、一昔前は「和文は主語+目的語+動詞」「英文は主語+動詞+目的語」といった構文(ルール)に沿って訳した単語を並べ替える"ルールベース"の機械翻訳だったが、それだと直訳に近く、意味のわからない訳文になりがちだったという。一方、現在主流の「ニューラル機械翻訳」は、機械が人間の脳の働きを模した深層学習を活用。原文と翻訳文のデータを機械にどんどん教え込み、ためこんだデータから学習モデルに沿って適切な訳文を作り出すという。
「文章をバラバラにするのではなく丸ごと覚えこませ、さらに日本語特有の言い回しや微妙なニュアンスを踏まえた翻訳例文もデータベースに加えることで、違和感のない訳文を作れるようになってきています」
■ますます進化し 精度は上がり続ける
ニューラル機械翻訳はデータの量が多く、良いアルゴリズムがあれば、性能は上がり続けると、隅田さんは言う。「データは増える一方ですし、アルゴリズムも2~3年で新しいものが出てきています。進歩が止まる兆しはなく、今後さらに性能は上がっていくでしょう」
さらに会話を翻訳する場合は、話し声を正確に認識することも重要だ。隅田さんは、「機械の音声認識はかなり正確になってきている」という。
「聞き取った外国語を文字化するのは、ネイティブの人間より機械のほうが速くて正確なこともあるほど。音声出力の技術も、最近はかなり自然に聞こえるようになっています」