しかし俺、よく営業で外回りできてたな。20代のころ、僕、小さい広告代理店で営業やってたんす。毎日外回りで、新規のお客さん含め、営業先をあっちこっち飛び回ってたんす。あの時はカーナビもなかった。てか、カブ(よく営業で使われるオートバイの一種ですな)で営業先を回っていた。地図を頼りに。
待てよ。俺は別に地図が読めないわけではないのかもしれない。現に20代のころは地図を頼りに営業先を飛び回っていたのだ。そうか。甘えているのだ。現代の便利さにあぐらをかいてしまっているのだ。ここはひとつ、奮起しようじゃないか。50を過ぎてから克服することがあったっていいじゃないか。ようし。どんと来い、東西南北。
…え?何?現代の便利さにあぐらをかいてるんじゃなく、現代の便利さを活用できてないだけ?Googleマップとかあるでしょ?…ちょ、ちょ待て、読者諸兄よ。最近少しずつデジタラーの道を歩みつつある俺だが、まだその速度は牛歩並みだ。いきなりそんな最先端テクノロジーを導入するのは俺にはちと敷居が高い。うん、だから、あのォ、アレだね、まずはアレです、角を2つくらいは曲がれるようにしますです。
■佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける。原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)が近日公開予定