小山さんは、男性と比べて女性のごみ屋敷は掃除が厄介だと話す。

「お弁当も飲み物も、なぜか少しずつ残すので腐敗臭が強い。さらに女性は、悪臭を気にして芳香剤や香水を使いますから、両方が混じって、とんでもない臭いになるんです」

 ごみは地層のように圧縮されて積み重なる。トイレが汚物で使えなくなり、キッチンやリビングに汚物を入れたペットボトルやカップラーメンの空容器が放置されている部屋も珍しくない。

「腐敗した食料や汚物の液体は、下のファッション雑誌や本、衣類やブランドバッグにしみ込んでガチガチに固まります。下の層は、スコップで掘らないとごみを運び出せません」(小山さん)

 清掃代は、安くはない。3、4階建てのエレベーターのないマンション。10畳の部屋で見積もりは、数十万円。運転や運び出し作業に想定以上の人員が必要になることもあるという。

 依頼者が女性の場合、「近所の人や家族には、絶対に(汚部屋の)掃除を知られたくない」とリクエストが入ることも珍しくない。その場合、ごみを段ボールに移し、私服での作業が必要になる。

「仕事が忙しい」「疲れて動けない」――。

 ごみ屋敷になるきっかけは、日常生活のなかに潜んでいる。

 環境問題への意識の高まりとともに細分化するゴミ出しの分別ルールになじめず、ごみ屋敷化するケースもすくなくない。

「きれいになった部屋は広く感じました。汚い部屋を見られるのがイヤで、悩んでいたことがつまらなく思えるほど、いまは快適です」

 由美(仮名)さん(26)は、ほんのすこし、涙ぐんだ。彼女もかつて、ごみ屋敷の主だった。

 結婚を機に、実家を出た。一戸建ての住宅で新婚生活をスタートさせたものの、すぐに自治体のごみ出しの分別ルールに戸惑った。資源ごみや不燃ごみ、など分別のルールが実家の自治体より細かいのだ。ごみの集積場で、近所の住人に注意されることが増え、ごみを出しづらくなった。

次のページ
4年分のごみでひざまで埋まった