極論に思えるかもしれませんが、そんなちょっとした言い聞かせで人のモチベーションは変化するのです。

 何事も希少性を感じるとモチベーションは上がります。仕事であれば、「退路を断つ」というイメージです。「今日しかない、今日を逃せば仕事として取り組めないかもしれない」と思うと、やらされるというよりは、自主的に前向きに取り組むことができます。

「退路を断つ」というと、やはり極端なシミュレーションが必要かもしれません。たとえば、眠いから打ち合わせは来週に延期しようと考えていたのを「今日、打ち合わせができないと仕事は没になるよ」と口に出すのです。すると相当前向きな打ち合わせができます。 

 私の知人の編集者も生産性の低さに悩んでいたようですが、「今日やったら自分は天才」「○時間以内にやらないと死ぬ」などと言い聞かせると、時間のリミットを意識しながらバリバリとこなせると語ってくれました。 

 このように口に出して思い込む手法としてアファメーションがあります。一般的には「私はできる」や「私はもっと良くなる」と肯定的な言葉で現実を作り出す方法です。この変則版として、退路を断つ状況を作り出してみるのです。 

 悲観的な未来ではなく、明るい成功に導くための手段としての活用です。「今日やれば、明日はあんなことができる、こんなこともできる」という口ぐせで前向きな状況を醸成するのも効果的です。すると、追い込まれて悲壮感が漂う状態に陥ることなく、意外なほどモチベーション高く仕事に取り組めるのです。

西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。

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