すでに社会の分断が激しい米国で、自身への投票可能性がある有権者に強く響かないコロナ対策を重視しないトランプ陣営だが、大統領本人が感染してしまったことを逆にうまく利用して、前回選挙同様に最終盤でのどんでん返しにつながる奇策を生み出そうとしている節がある。
「トランプは再選のためなら何でもやる。なぜか? 大統領の職にあるうちは摘発できない脱税容疑など数々の疑惑があることを本人は知っている。大統領でいることが生命線だから必死度が違う」
大統領就任前、トランプ氏がホストを務め、大衆の関心を集める演出術を開花させたとされるリアリティー番組を放送したエンターテインメント大手NBCユニバーサルの元幹部のマイク・シングトン氏(46)がオンライン取材で語った。
「トランプ政治は常にエンターテインメント」と揶揄するシングトン氏だが、今回、大統領は読み誤ったと考えている。
「米国社会は確かに分断しているが、同時にコロナは全国民に影響する深刻な問題。事前投票が進行するタイミングでの今回の大統領のコロナ軽視の言動は、彼自身にも破壊的だ」
(朝日新聞GLOBE編集部・山本大輔)
※AERA 2020年10月19日号より抜粋