新型コロナに感染したトランプ米大統領がわずか3日で退院し回復をアピールした。ウイルスの脅威を軽視する言動を重ねるが、選挙の劣勢挽回につながるのか。AERA 2020年10月19日号の記事から。
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2月と3月にあったワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード編集主幹との会話で、「(コロナは)重いインフルエンザよりもっと致命的だ」、「パニックを起こしたくないので、常に軽く見せたかった」などと話したとされる大統領。11月3日の大統領選投票日が迫る中で劣勢が報じられるにつれて、コロナ軽視の言動はますます激しくなっている。
退院翌日には再び新型コロナウイルスをインフルエンザと比較し、「致死性が低い」などと投稿。入院中には大統領警備員を同乗させて車で病院外に出た。退院で使ったマリーン・ワンは機内の徹底的な消毒が必要で、パイロットは14日間の自主隔離だ。世界中が順守に努める感染防止のガイドラインを無視した言動に対し、専門医の観点から松医療センター院長補佐兼感染症内科部長の矢野邦夫医師(65)が警告する。
「ユニバーサル・マスキングの軽視が感染を拡大させている。感染しても自分のように元気に戻れるから大丈夫というパフォーマンスは避けてほしい。ほとんどの感染者はこれほどの治療薬を迅速に投与されることはない。『感染しないようマスクと手指消毒をしよう。感染したとしても、自分のように元気に戻れる可能性があるのだから、あきらめないようにしよう』というメッセージを出してほしかった」
■大統領自身にも破壊的
コロナ軽視は大統領選に影響を及ぼすのだろうか。世論調査をみると、大統領が目の敵にするCNNの調査(10月1~4日)ではバイデン候補が16ポイントリード、親トランプで知られるFOXニュースの調査(10月3~6日)でもバイデン氏が10ポイントリードしている。
ただ、16年の前回選挙では投票日前日まで劣勢が報じられたトランプ氏が初当選しており、調査結果への信頼度は危うい。米カイザーファミリー財団が8月下旬から9月上旬に実施した世論調査では、民主党支持者が経済(14%)よりもコロナ対策(36%)に関心を示したのに対し、共和党支持者はコロナ(4%)より経済(53%)を圧倒的に最重視。無党派もコロナ(19%)より経済(29%)だった。