上位にランキング入りした会社は通信関連の事業を手がける会社が中心のようだ。だが、5位に入ったデータセンター大手ブロードバンドタワーの藤原洋社長は本誌の取材に対し、こう話す。
「5Gは、実は、スマホなど通信機器や設備といった電波を直接扱う産業よりも、電子商取引や教育、医療、家電、ロボットなど通信サービスを利用する産業の方が成長すると見込まれています」
藤原社長は政府の通信政策に関する有識者会議に参加するなど、産業側の視点から提言を主張してきた。
「国内の電波関連市場は現在、全体で約60兆円規模。それが2030年までに1・4倍の84兆円に伸びると見込まれています。このうち、電波を利用する産業の市場規模は49・5兆円を占め、同時点での電波を直接扱う産業の市場規模34・5兆円を上回る試算です。5Gで産業のすそ野が一気に広がるとみられています」(同前)
5Gは、今までの「スマホのための通信インフラ」という位置づけから、「産業のための通信インフラ」に大きく変わるのだという。中でも、藤原社長がとくに期待をかけているのは製造や医療の現場での利用だ。
「自動車や家電メーカーの製造工程に、5Gの通信機能を組み込んだセンサーやカメラ、ロボットを導入すれば、その場にいなくても、きめ細かな作業ができるようになります。5Gは通信の際に生じるタイムラグが少なく、よりリアルタイムに近い速さで情報をやり取りできるからです。従来は溶接や塗装の作業工程でしか進んでいなかった自動化が、熟練工が持つ匠の技に頼っていた組み立てや検査の工程でも進むようになる。医療現場でも、遠隔での診断や治療に加え、健康管理に有効です。体温や血圧などの健康データを普段から簡単に把握・管理できるようになれば、病気の予防、ひいては、医療費の削減に効果的です」
ただし、日本では、こうした「利用する側」の企業の取り組みが遅れているという。