平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長
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昨年7月、世界選手権男子400メートル個人メドレーで優勝した瀬戸大也選手 (c)朝日新聞社
昨年7月、世界選手権男子400メートル個人メドレーで優勝した瀬戸大也選手 (c)朝日新聞社

 指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチ。連載「金メダルへのコーチング」で選手を好成績へ導く、練習の裏側を明かす。第41回は、瀬戸大也選手の一連の行動について。

世界選手権男子400メートル個人メドレーで優勝した瀬戸大也選手

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 東京五輪の競泳日本代表に内定している瀬戸大也に対して、日本水泳連盟は10月13日の臨時常務理事会で年内活動停止とする処分を決めました。女性問題が発覚したことを受けて、日本水連の競技者資格規則で処分の対象となる「スポーツマンシップに違反したとき」「連盟及び加盟団体の名誉を著しく傷つけたとき」に当たると判断されました。競技者資格規則は「善良な市民、健全な社会人としての品性を保ち、市民社会における水泳スポーツの地位の向上に寄与すること」などと定めています。

 青木剛会長は「社会人選手として、五輪内定選手として、『水泳日本選手団行動規範』に準じた行動をするものと期待していたが、一連の行動は、それに反したもので大変残念」とのコメントを出しました。私もそのように考えます。

 昨年の世界選手権個人メドレー2種目で金メダルを取って東京五輪代表に内定しましたが、実質的に日本代表選手団の一員として責任ある行動が求められています。特に五輪代表は人から尊敬されるし、逆に軽率な行動をすればたたかれる。公人としての振る舞いが求められるのは、五輪強化選手に対する日本オリンピック委員会(JOC)のインテグリティ(誠実さ、真摯さ、高潔さ)教育プログラムにも盛り込まれています。代表選考直後の合宿の講習で何度も伝えてきたことですが、心に響いていなかったことが残念です。

 今回の件で選手たちと話をする中で、「『競泳という種目を応援する気にならなくなった』と言われたことがつらい」という声を聞きました。水泳界全体が批判されることは心外ですが、期待の大きさの裏返しと受け止めています。

 前回も書いたように私が大学3年の1984年、ロサンゼルス五輪の競泳日本代表選手が大麻を吸引する事件が起こりました。86年にコーチの仕事を選んでから、スポーツ選手のモラルや行動規範について繰り返し考えてきました。

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