安倍政権の官房参与に招かれ、金融政策の理論的な支柱となっている浜田宏一・エール大学名誉教授。穏やかな浜田氏だが、白川方明(まさあき)・日銀総裁の緊縮的な政策に対しては痛烈に批判している。白川総裁は、浜田氏が東大経済学部で教鞭を執っていたときの教え子だ。

 2010年に出版した『伝説の教授に学べ!』(共著、東洋経済新報社)には、浜田氏による白川総裁への公開書簡を収録した。日銀の不適切な金融政策に異を唱えるためだ。浜田氏が書籍を白川総裁に送ったところ、「自分で買います」との手紙をつけて送り返されたという。

 浜田氏は白川総裁について、「私が教えてきた学生のなかでも、白川総裁の聡明さには大変な感銘を受けました」と評した。当初、白川総裁に期待していたのだ。「白川さんには経済学者に必要である数理的な能力と、そこで得た洞察を政策問題に適用して考える能力の二つが兼ね備わっていました。だから、白川さんが日銀総裁になったとき、心から喜びました。これで、真っ当な経済論理に則した金融政策が発動されるだろうと」。

 しかし、実際には何度となく落胆させられたという。「彼は『歌を忘れたカナリア』になってしまったのでしょうか」。

週刊朝日 2013年2月8日号

暮らしとモノ班 for promotion
【フジロック独占中継も話題】Amazonプライム会員向け動画配信サービス「Prime Video」はどれくらい配信作品が充実している?最新ランキングでチェックしてみよう