「こうしておけば、没後に訃報を知らせるお互いの相手がすぐにわかるし、自分の死後も家族と友人らの縁をつないでおけます。遺族が円満な人間関係を維持できるようにしておくことが最後の役目です」

 この「遺族の人間関係を壊さない」という考え方は、遺言書の作成や葬儀、墓選びでも重要だ。

 遺言書には大きく、自分で紙に書いて残す「自筆証書遺言」と、公証役場に行って公証人に作成してもらう「公正証書遺言」の二つがある。どちらも法的効力は同じだが、自筆証書の場合、文書の形式に不備があると無効になる恐れがある。トラブルを確実に避けたいなら、公正証書が安心だ。

「自筆証書でもう一つ気をつけたいのが、遺言書の保管場所を本人が忘れたり、遺言書があること自体を家族が知らないケースです。死後、数年経ってから遺言書が発見されると、新たな火種になることもある。こうしたトラブルを防ぐために、今年の7月から自筆証書遺言を法務局が預かって相続人に通知してくれる制度ができました。不安な方はぜひ利用をお勧めします」(武藤さん)

 また、葬儀業者や墓地・墓石を選ぶうえでは、生前に3カ所ほどから相見積もりを取っておきたい。このとき総額だけでなく、素人が見てもわかりやすい料金表示になっているかチェックしよう。

「悪質な葬儀業者だと、項目が大ざっぱだったり、参列者の数によって料金が変動する旨を記載しておらず、葬儀後に大幅に割り増しした代金を請求してくることもある」(同)

 もしもの事態は、いつやってくるかわからない。「まだ早い」と感じる今から、夫婦で生前対策を始めよう。(ライター・澤田憲)

週刊朝日  2020年11月6日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
7月16,17日開催Amazonプライムデー。八村塁選手が厳選するアイテムは?