■小競り合いはどこでも
米シンクタンク「ニューアメリカ」が10月に発表した世論調査の結果では、米国民の約3分の1が政治的な目標を進めるためなら暴力を正当化するとしている。ニューヨークなど大都市では、銃による事件が夏以降、急増している。大規模とは言えずとも、小規模な暴力行為や小競り合いが、どの州の投票所付近でも起きる可能性は予想される。
10月22日に開かれた最後の大統領候補討論会では、民主党候補のバイデン前副大統領がトランプ氏を「近年で最も人種差別的な大統領の一人」と攻撃。トランプ氏は「自分は、人種差別主義から最もほど遠い人間だ」と反論した。だが、9月29日の第1回討論でトランプ氏自身が「一歩下がって、待機せよ」と話した民兵組織「プラウド・ボーイズ」などは、移民や女性への暴行をも容認する極右の団体だ。
一方で、新型コロナの感染は森林火災のように広がるばかりで、果たして投開票日にどの程度の有権者が足を運ぶのか全く見当もつかない。さらに、民兵を怖がる人が投票しない可能性も出てきた。米国は大混乱の最中だ。(ジャーナリスト・津山恵子(ニューヨーク))
※AERA 2020年11月2日号