宣言後は男性社員が妻の妊娠を報告すると、上司や役員を交えて育休取得に向けた面談を実施。業務引き継ぎを会社幹部も共有することで、休めない雰囲気を払拭しました。また、給付金や補助金などを含めた給与シミュレーションを示し、収入面の不安も緩和しました。

 2018年末と2019年2月に育休を取得した30代の青柳剛志さんは「妊娠の報告をすると上司からは『いつから取るの?』と言ってもらい、2度取得ができる特例も会社が説明してくれた。何の心配もなく育休が取れた」と話します。

■50代部長。「会社人間」としての苦い経験

 50代の小林さんが男性の育休取得にこだわるのは、サカタに転職する前の「会社人間」としての苦い経験です。

「子ども2人が小学生の時に、中国に1年間単身赴任したり、帰宅が毎日午後10時を過ぎたりするなど、仕事優先で家族を顧みませんでした」。サカタに移ってからは、社員目線の会社を第一に働き方改革に着手。1人あたりの平均残業時間(1カ月)は14年の17.6時間から18年は1.1時間に減り、育休推進の機運につながりました。

 小林さんによると、育休推進の効果は社内外で出始めています。社員の長期休暇を前提とすることで、業務の見直しや特定の人が仕事を抱える属人化の解消が起こり、生産性が向上。懸念された主要事業の売り上げも堅調です。新卒採用でも、子育て環境を重視する学生へのアピールとなり、応募が増加しました。

「男性の育休により、社員と組織を活性化させ、業績向上を狙う。取得100%は経営戦略です」

■育休が取りやすい組織の特長

 育休が取りやすい組織とそうでない組織。その違いはどこにあるのでしょうか。男性の家事・育児参加を後押しするNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の代表理事、安藤哲也さんに聞きました。

「会社での育休に関しては、まず国の制度がしっかりとあります」と話す安藤さん。それでも、中小企業に勤める男性からよく、「うちの会社には制度がない」という相談があるそうです。「もちろん、それは間違い。今の法律は従業員が男性でも女性でも、取得する権利が保障されています」

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なぜ育休の取得が進まないのか?