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日本の取得率は7.48%(2019年度)と、まだまだ取りづらい「男性の育児休業」。日本商工会議所が中小企業6千社を対象にした調査では、「男性社員の育児休業取得の義務化」について、7割の企業が「反対」と回答しました。一方、中小企業でも育休取得率100%を達成する会社が出てきています。育休が取りやすい組織とそうでない組織の違いはどこにあるのでしょうか?
朝日新聞が運営するwebメディア「withnews」や朝日新聞デジタルで人気の連載「#父親のモヤモヤ」を書籍化した朝日新書『妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体』の一部を抜粋、再編集して紹介します。
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■育休を取得しなかった男性社員らの本音
信濃川に沿った田園が近くに広がる新潟県長岡市のサカタ製作所。工場や倉庫、空港といった大型建築の屋根金具などを製造する同社では2018年、子どもが生まれた男性社員6人全員が3週間以上の育休を取得しました。
社員数は約150人。その2年前まで取得率は「ほぼゼロ」でした。「実績作りのために取らせた年もありましたが、日数が短く中身も伴わなかった。『真剣にやろう』と2016年暮れから、全社的に取り組み始めました」。総務部長(現・技術開発部長)だった小林準一さんは振り返ります。
まず行ったのが、「休めない雰囲気」の解明です。総務部の女性社員2人を「推進スタッフ」に任命し、育休を取得しなかった男性社員らに、聞き取りをしました。「自分の仕事が忙しくて休めない」「上司や仲間の手前、休みづらい」「評価が下がる」「休んだら経済的に困る」などといった社員の本音が浮かび上がりました。
育休を促されても、売り上げも求められるような矛盾した会社の空気。それを打破したのが、60歳間近の坂田匠社長が行った「イクメン推進宣言」でした。全社集会などで育休を取得した社員や推進した管理職を高く評価するとした一方、「業績が落ちても構わない」と明言。「『何を言うか』より『誰が言うか』。社長のメッセージで方針が明確になりました」