子供の意思を尊重することも重要だ。小5から中学受験を意識して塾に通った。近くに大手の学習塾ができて多くの友人が通ったが、西村さんは少し遠くの少人数の塾を選んだ。母親は言う。

「『塾では他の学校の子と学びたい』と言ったので、その考えを大切にしました。無理に近くの塾に行かせたら、勉強が嫌になる理由を作ったかもしれません」

 好きな科目から勉強のきっかけをつかんだ人もいる。東大文科三類(文三)に合格した荒木涼花さんだ。得意科目は日本史。暗記するのではなく、なぜその制度ができたのかなど考えることが好きだという。

 この学びの視点に気づかせてくれたのは、小6時の塾の先生だ。知識だけではなく、歴史の流れやエピソードを多く話してくれた。受験に出ないことでもおもしろかった。

 中学に入ってからは歴史上の人物をテーマにした岩波新書などを読みあさった。歴史の過程に目を向けながら学ぶ姿勢を身につけることができた。

「この視点は日本史以外でも役に立ちました。例えば、東大の数学では公式がなぜそうなるのか理解していないと、どの公式を使って解いたらいいか判別できなくなります。自然となぜそうなるのか考える力がついていました」(荒木さん)

 スポーツのように勉強を楽しむ人もいる。東大理一に合格したKさん(女性)は言う。

「勉強は、“がり勉”と揶揄(やゆ)されるものではありません」

 勉強は過酷だ。苦手科目からは目を背けたくなるし、相手だけでなく自分との闘いでもある。

「優秀な人はなぜ間違えたかが言える。私は何が苦手なのか手帳に書くことで、客観的に捉えることができました。弱点を把握して勉強の計画を立て、苦手なものができるようになったときの達成感は大きかったです」

 勉強での競争は楽しみでもあった。小4のときの塾の先生は冗談でクラスを和ませながら、生徒に競争をさせていた。

「自分から学ぶようになりました。友達と問題を出し合い、楽しみながら競い合いました」

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