菅総理が所信表明演説で2050年までに温室効果ガス排出を全体としてゼロにすると宣言した。途上国を含めポストコロナの経済復興はデジタルとグリーンの2本立てというのが世界の常識なのに、菅総理は就任以来、ハンコ撲滅、携帯料金値下げ、デジタル庁創設などデジタル化の話しかできなかった。今回出てきた「グリーン社会実現」の重要性は菅総理の頭には全くなかったようだ。彼は「環境音痴」なのだ。
今回この話が大々的に出てきたのは、菅総理が覚醒したからではない。単に日本が追い詰められたというだけのことだ。
まず、日本がグリーン政策で大きく後れをとったことで、日本企業が国際競争上極めて不利な立場に追い込まれている。例えばアップルは納入企業にカーボンニュートラル達成を要求しているが、日本では自然エネルギーの発電が少なく、グリーン電力の価格が高い上に調達も困難だ。アップル納入企業は日本にいては競争できなくなっている。世界の機関投資家もSDGs投資などの基準を厳格化し日本企業も対応を迫られている。今や経団連も再エネ関連の規制緩和を要望し、政府の無策は許されなくなった。
また、先進国が次々とカーボンニュートラルの実現時期を宣言する中、日本だけがゼロ目標を約束できず、国際的批判にさらされている。先日は中国までも60年ゼロ宣言を出し、日本が沈黙を続けるのは不可能になった。
さらに、コロナ禍の影響で閣僚級国際会議のリモート開催が増え、出たくない会議にも出ざるを得なくなった。環境関連の会議では世界各国が非常に先進的な取り組みを紹介するのに、日本だけはほとんど話せる内容がなくて赤っ恥をかくケースが増えている。政治家もこの問題の深刻さを身をもって体験した。
そして、最後のとどめが米大統領選挙だ。バイデン勝利なら米国の環境政策が劇的に転換する。カリフォルニア州などが既に先鋭的な環境規制を実施している米国と違い、日本は舵を切っても間に合わない。一人取り残され孤立するのは確実だ。