落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「薬物」。
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東海大野球部部員の大麻使用が発覚した。部は無期限活動停止らしい。連帯責任? やってない部員がなんかかわいそうじゃない? 連帯責任はむしろ監督者の責任放棄のような気がするなぁ。
『薬物』についてなんか言える立場じゃないので、今回は周辺のオクスリ事情についてツラツラと書いてみますか。
毎朝、尿酸値を下げる薬を飲んでいる。3年前に痛風の発作が出てから転ばぬ先の杖。これさえ飲んでおけば安心だ。「暴飲暴食できる『魔法の薬』なんだぜ!」と家人に言うと「アホめ」と吐き捨てられた。え? 違うの? 3カ月に一度採血して薬を処方してもらっている。薬局のお姉さんが毎回「お気をつけて」と言ってくれる。お姉さん、これは『魔法の薬』なんだから大丈夫なんだぜ。
カバンの中のポーチには正露丸を常備している。チャックを開けるとかなり臭う。糖衣錠なのにまだ臭う。これだけ科学医学が進歩しても正露丸は臭う。人類には伸び代があるようで、楽しい。それとも正露丸に関して人類は諦めているのか。まぁ、臭わないと効かないような気もするからこのままでいいのかな。
保育園のころ、喘息の発作で夜が嫌いだった。横になると胸から喉がヒューヒューいって眠れない。椅子に腰掛けてなんとか寝ていた。粉薬を吸入器で吸っていたのだが、あるとき間違えて吸わずに吹いてしまった。中のファンが逆に回って薬が外に大放出。母の顔面が粉だらけになって二人で大笑いした。喘息で唯一の楽しかった思い出。最近ようやくヒューヒューいわなくなった。
とある知人の革ジャンの内ポケットから小袋に入った「草」が出てきたらしい。どうも東海大野球部的なヤツのようだ。全く身に覚えがないという。革ジャンは先輩のお古で、先輩に聞くと「知らない! 知らない! 知らない!」と『知らない』を三遍吐いたそうだ。どうも怪しく感じたものの、革ジャンの出所を尋ねると「古着屋で買った」らしい。皆さん、古着には気をつけて。けっこうそんなことあるみたいよ。