豊富な味と香りで人気が高まるクラフトビールに、新たな飲み方が広がりつつある。専用のボトル「グラウラー」に詰めて持ち帰れば、家でもブルワリーと遜色ない味が楽しめるのだ。ライター・福光恵氏がAERA 2020年11月9日号でクラフトビールの最前線を綴る。
【写真】豊富な味と香りで人気が高まるクラフトビールの世界を写真で紹介!
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個性的な香りや味で人気が高まるクラフトビール。最近は缶をスーパーやコンビニでも見かけるようになったが、コロナ以降はさらに新しい飲み方が人気に。クラフトビールのテイクアウトだ。
キリンビールの社内ベンチャーとして生まれたクラフトビールのブランド「スプリングバレーブルワリー」の醸造所併設店舗「スプリングバレーブルワリー東京」(東京都渋谷区)。クラフトビール人気を受け、20~30代の若者客が多く、女性客も6割ほどを占める。そしてこの10月、従来のボトル(瓶詰め)によるテイクアウトや通販に加え、保冷機能付きボトル「グラウラー」で同店の作りたてクラフトビールを持ち帰れるサービスをスタートさせた。
「4~5月の休業後、客足は戻りつつあるものの、この先100%、以前の生活に戻ることはないかもしれない。そう考えて、新たな販売方法に踏み切りました」
同店のヘッドブリュワー・古川淳一さん(35)は言う。
「ビールはペットボトルなどで持ち帰るとまったくの別物になってしまいますが、グラウラーなら店に近い味を持ち出せる。日本でもクラフトビールは多様化しており、飲み方にも新しいスタイルが定着する予感です」
テイクアウト人気の背景にあるのは、コロナ禍による二つの変化。まずは、巣ごもりで行きつけの居酒屋に気軽に行けなくなったぶん、お気に入りの銘柄のビールをテイクアウトして、ちょっと贅沢な家飲みを楽しむ人たちが増えた。
もう一つは、酒税法の期限付き措置の影響。これまで、酒のテイクアウト販売ができるのは、酒類小売業免許を持つ酒店だけだった。それが今年4月、コロナ禍で苦しむ店を救済する目的で、申請した飲食店に国税庁が6カ月間の期限付きで酒類小売業の免許を付与。その後、この期限が延長され、現在は申請をおこなって許可が下りれば、来年の3月末までは居酒屋などでも、酒のテイクアウトができるようになっている。