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世界のトップ・マーケターが集う「ワールド マーケティング サミット オンライン(eWMS)」が11月6日から開催された。初日にはフィリップ・コトラー氏からの信頼も篤く、著書『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』の共著者を務めたヘルマワン・カルタジャヤ氏、イワン・セティアワン氏が登壇した。新作『Marketing 5.0』の刊行を準備中であることを明かした両氏は、最新のマーケティング理論の一端を披露してくれた。
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■「CI-EL(シエル)」を論じたカルタジャヤ氏
2020年「ワールド マーケティング サミット オンライン(eWMS)」初日の11月6日、午前中にインドネシアのコンサルティング企業「マークプラス」創業会長のヘルマワン・カルタジャヤ氏、午後に同社の現CEOであるイワン・セティアワン氏の講演が行われた。
カルタジャヤ氏はアジア・マーケティング連盟名誉フェローも務める、アジアを代表するマーケターの一人。1998年に初めて会ったコトラー教授と意気投合し、以後、何冊ものマーケティング関連の著書を共同執筆している。
カルタジャヤ氏の講演では主に、氏が理論化した、ニュービジネスを生み出す要素「CI-EL(シエル=Creativity, Innovation, Entrepreneurship, Leadership)」について語られた。
新しいビジネスは、多くのマネージャーが既存事業の改善で収益向上をめざす一方で、一部のクリエイティブなマネージャーによって生み出されるといい、カルタジャヤ氏は「しかし、新事業を起こしそれを軌道に乗せるには、特別な資質が必要となります」と、強調する。
こうした資質を備えた「クリエーター」「イノベーター」「アントレプレナー」「リーダー」は、カルタジャヤ氏によればそれぞれ異なる属性を持った人々に分類される。
クリエーターの典型はイーロン・マスク氏で、電気自動車のテスラはローンチさせたが、脳から直接コンピューターに指示を伝えるニューラリンクはまだビジネスに至っていない。ビジネスにつながるかどうかなどおかまいなしに、アイデアの実現に向けて突き進んでいくのがクリエーターなのだ。
イノベーターは事業性に気を配る。その好例はヴァージン・グループの創業者リチャード・ブランソン氏で、カルタジャヤ氏に「私はビジネスマン。クリエイティブなアイデアだけでは動かない。時期尚早と見れば延期するし、競合に勝てないと見れば撤退する」と語ったという。