AERA 2020年11月23日号より(イラスト/宮野耕治)
AERA 2020年11月23日号より(イラスト/宮野耕治)
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 コロナ禍にこれまで以上に体温を測定する機会が増えた。体温は感染対策のみならず、意識すれば免疫や代謝アップにも大きくかかわっている。「体温マネジメント」を特集したAERA 2020年11月23日号を紹介。

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 アエラが11月上旬に実施したウェブアンケートでは、「平熱が低い。もっと体を温めたほうがいいのだろうか」(54歳・男性・会社員)など、平熱が低いことを心配する声も多数寄せられた。

体温は測る環境や時間帯で数値が異なる。まずは自分の正しい平熱を確認することが必要だ。そのうえで気になるのが、「平熱が低いことは不健康なのか」。早稲田大学人間科学部の永島計(けい)教授(体温・体液生理学)は、平熱が高い人と低い人、その違いは「代謝」にあると指摘する。

「代謝とは、食べたものを消化吸収し、体が活動するのに必要なエネルギーに変換することです。我々は体内で作りだした熱を放出しながら生きていますが、基本的に平熱が高い人はたくさんの熱を放出しているので代謝がよく、低い人は放出する熱が少ないので代謝も低いと考えられます」

 永島教授によると、まったく動かない状態でも消費されるエネルギー「基礎代謝」の60~70%ほどは脳や内臓などの中心臓器で、残りの30~40%は筋肉で消費されているという。このため、筋肉質な人は体温が高く出る傾向があり、筋肉量が少ない人は平熱が低く出やすい傾向があるという。

「筋肉が少なく活動量が少ない人が多いという意味で、平熱が低い人は不健康な傾向にあるとは言えそうです。ただし、平熱は加齢に伴って低下するものであり、上げようと思っても簡単には上がらない。上がった下がったと一喜一憂する必要はありません」

■マクロファージが増強

 コロナ禍の今、「平熱が低いので免疫力が低い気がする」(42歳・女性・会社員)と、体温と免疫の関係を気にする声もあった。

 実際、ネットで「体温」「免疫力」で検索すると、「体温が1度下がると、『免疫力』は30%低下する」という記事を多数見かける。これに対し自然科学研究機構・生命創成探究センターの富永真琴教授は「私が調べた限り、その数字の根拠となる科学的な論文はなく、数字自体のエビデンスはありません」と言うが、体温が高くなることで免疫が活性化する可能性は大きいと語る。

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