作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、群馬県草津町で賛否が問われている女性議員に対する解職請求(リコール)について取り上げる。
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12月6日、群馬県草津町で、一人の女性議員に対するリコールの賛否が、住民投票で決定される。
発端は、この女性議員が町長から性被害を受けたと昨年の11月にメディアに告発したことだ。町長は性被害の事実はないとし、女性を刑事と民事で訴え、その後、草津町議会は彼女を「議会の品位を傷つける発言をした」と除名処分にした。その後、群馬県がこの処分を取り消し、女性議員は議会に戻れたのだが、改めて議会で議員辞職勧告を受け、さらに町議等が先導して今回のリコールにつながった。
現在の草津町議会は12人。女性は町長を訴えた新井祥子さんただ一人で、彼女は草津町議史上初めての女性議員でもある。小さな地方議会で、「性被害の事実はない」という町長の声が一方的に通ってしまう現実、さらに現職の町議等が町民にリコール投票を求める力には、やはり違和感しかない。日本有数の温泉地でありながら、女性がたった一人の議会。そこはどのような空気で、何が語られているのだろう。気になり、草津町議会の動画を何げなく見た。これがかなりの衝撃的な内容だった。
まず、男性が圧倒的多数の歪(いびつ)さは映像で見るとやはりインパクトがある。議員12人のうち11人が男性で、ペーパーを配る係に女性が一人いるが、15人ほどいる役所の担当者等も男性ばかり。議場が新しく見えるせいか、まるで女性が生まれない未来社会に来たかのような強烈な世界観だ。視聴したのは新井議員に辞職勧告が出された今年3月2日の議会だが、そこで映されていたのは、男性たちが徒党を組むように、新井議員をおとしめる様子だった。
「(セクハラ告発は)草津町議会にとっても、町民にとっても、経済にとっても、対外的にも非常に迷惑!」と大声をあげる議員がいれば、「レイプされたというのなら、なぜ即刑事事件にしなかったのか?」と、新井議員の告発の真偽を疑う発言も繰り返された。こういう発言に新井議員は「裁判中だから発言を控える」と言い、時には「性被害者はすぐには訴えられないものだ」などと感情を交えず静かに反論していた。
また過去に新井議員が草津町の権力者をパロディー化(欲深い豚の顔に似せたりなど)したマンガを自身の活動誌に掲載していたことに触れ、「あなたは人を豚にしたりロバにしたりしているんですよ? これほどのパワハラはないんですよ!」と声を震わせる議員もいた。それはパワハラとは言わない……と思ったが、理屈よりも感情がものをいう世界のようで、「草津町議会にはセクハラもパワハラもない」と、何の根拠もなくこの議員はただ大声で言い切った。