■紅白の同じ舞台に興奮

 しかし、一度は諦めたはずの思いが、時を経て蘇る。2018年末、平成最後の紅白歌合戦でサザンと初共演を果たし、至近距離で彼らのパフォーマンスを目にした。

 自分が同じ舞台に立っていることなんかそっちのけで、一瞬で中学時代に戻ってしまいました。ステージを観てあんなに感動と興奮を覚えたことはありません。その数カ月後に、スタッフと今後の活動について話し合う機会があり、「無理なのはわかっているけれども、桑田さんに曲を書いていただきたい」と打ち明けたんです。すると、うちのディレクターから「とにかくあなたの思いを手紙に書いてみたら?」と提案されて、意を決して中学時代からの思いの丈をしたためてお送りしました。ほとんどラブレターですね(笑)。きっとお断りされると思っていましたし、積年の思いをご本人に届けられるなら、それだけでもう十分だと思っていました。

 それから数カ月後、スタッフを介して「一度お会いしましょう」と桑田から連絡が入る。昨年の9月のことだ。緊張しながら指定場所である音楽スタジオに向かうと、挨拶もそこそこに桑田が1枚の紙を坂本に差し出した。

 こんなものを書いたので、ぜひちょっと見てみてください、と。その紙には歌詞が書かれていました。目にした瞬間、うれしくて、恐れ多くて、涙があふれて……。いろんな感情が入り乱れている中、デモ音源が流れてきて、歌っているのはなんと桑田さんご本人! 「どうですか?」って聞かれたんですけど、どうもこうも、すごいに決まっているわけで。

 で、ギターをお持ちになって、「ここなんですけど、美空ひばりさん風に歌ってください」「ここが一番演歌っぽいですから、ちょっと都はるみさん風に」という感じで歌唱指導してくださいました。ああ、あの桑田さんが私に指導してくださっている……。もう、大感動ですよ。その後、デモ音源と歌詞をいただいてその日は解散となったんですけど、一緒に行ったスタッフとそのまま居酒屋へ直行しました。「この興奮を鎮めないと1日を終えられないよね」って。もちろん、いくら飲んでも鎮まらなかったんですけど(笑)。

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