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「鬼滅ブーム」はYouTubeでもトレンドのひとつになっています。「鬼滅の刃」に関する動画やタイトルやサムネイルに鬼滅を含む動画は再生されるので、どのジャンルにも鬼滅の刃を取り入れた動画があります。実は、鬼滅の刃のコンテンツの作り方と、YouTubeのコンテンツの作り方は、似ている部分があるんです。

 鬼滅の刃の人気の理由は、多くの人が分析しています。キャラクターの設定や世界観、技や武器のデザインや共感しやすいストーリーなど様々な要素がありますが、「ヒット作の要素を取り入れている」ことが挙げられます。

 鬼滅の刃は完全なるオリジナル作品ですが、過去のヒット作にある人気の要素を絶妙に取り入れて進化させた作品です。例えば、血を与えられると鬼になり、太陽を克服したいという設定は、「ジョジョの奇妙な冒険」という漫画の吸血鬼のオマージュです。純然たる悪のカリスマとして登場し、ストーリーが進むにつれて正体である見苦しさが露呈する無惨の人物像は、吸血鬼ディオに共通します。凡庸に見えた主人公の炭治郎が、実は最強の剣士の技を引き継ぐ一族の末裔だったという設定も、里でいじめられていた少年が実は強い忍者の息子で最強の尾獣を封印されていたという漫画「NARUTO -ナルト-」の主人公・ナルトの「凡庸に見えて最強の血筋」の設定に共通します。

 YouTuberも、人気の動画の要素を取り入れます。皆さんが知っている有名なYouTuberたちは、国内外の人気動画を何本もチェックして分析し、人気の理由を探します。そして自分の動画にその要素を入れてヒット作をつくります。音楽でも漫画でもYouTubeでも芸能でも、人気が出やすい設定や型がある程度きまっており、その要素を取り入れて作るのがもっとも効率よくヒット作や人気作品を生み出せます。このコンテンツの作り方が、鬼滅の刃とYouTuberに共通する部分です。

 もちろん、鬼滅の刃にはヒット作の人気の要素を取り入れながら、オリジナルな部分も多分にあります。例えば、主人公の強さが優しさであることです。少年漫画の主人公は、「明るくて強くて単細胞」な人物像が一般的です。炭治郎のような「優しくて健気な長男っぽい少年」は斬新です。彼の敵に対する優しさの描写は、鬼滅の刃の独自性の一つです。人間の弱さという読者の共感を得やすいストーリーを敵である鬼に付随させる点も見事です。YouTuberも、人気の要素を取り入れつつ独自性をもたせます。自分のチャンネルや動画にしかない独自性を組み込まないと、ただの二番煎じや劣化した作品になってしまいます。オマージュする部分とオリジナルの部分をバランスよく配合させる点も、鬼滅の刃とYouTuberの共通項です。

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