原発の稼働に際して避けて通れない、使用済み核燃料の問題。しかし核燃料の再利用について、日本だけでなく世界各国、現在決定的な解決策は見いだせていないようだ。この状況について作家の室井佑月氏は次のように話す。

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 本当のことをいえば、どの国も、もうこの件に関してはお手上げ状態って感じなんじゃなかろうか。それなのにそう言えないのは、莫大な金をかけてしまっているから? 他の国がこの件から降りるといってくれないから? けど、違ったな。もっと単純な話だった。

 8日の毎日新聞、「虚構の環(サイクル)」というコーナーに、このことが詳しく書かれていた。見出しは【経産省「撤退派」を次々更迭】だ。記事のなかで現職の経産省資源エネルギー庁課長級職員は、こう言っていた。

「核燃サイクルは恐らく完成しない。早く撤退した方がいいと思う。でも実際の政策となると無理」

 なぜなのか。「再処理から撤退→工場に貯蔵中の使用済み核燃料が各原発に送り返される→収容しきれなくなり全原発が即時停止」というシナリオを国も電力会社も最も恐れているからだという。

 ああ、そうか。「核燃料の再利用、やっぱ無理」といえないのは、原発の問題点をいえないからという、もっと単純な話なのであったのね。

 全国の原発の使用済み核燃料貯蔵庫は、いつか一杯になる。そんな遠くない将来だろう。だから、それはいつなのか。なぜ発表しないのか。ずっと夢見てろっていわれても、もう限界。無理無理。

週刊朝日 2013年3月1日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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