五輪だけではありません。安倍政権のときから、政治家と一部の人で物事を決め、党や国会での議論を軽視する政治が続いてきました。

 菅政権でも、中小企業の数を半分にすべきだと主張するデービッド・アトキンソン氏やパソナ会長の竹中平蔵氏が成長戦略会議のメンバーとして登用されました。

 彼らは国民から選挙の負託を受けていない民間企業のビジネスマンですが、国会議員よりも政策決定に強い影響力を持っています。こういった政治が続くことは問題だと私は考えています。

 この30年間で、日本ではずっと規制緩和が叫ばれ、競争が激化してきました。その結果、経済格差は広がり地方は疲弊。さらにはグローバル化の名の下に中国を「世界の工場」と捉え、日本国内の工場は中国に移りました。その結果、日本はコロナが流行してもマスクを安定供給できない国になってしまいました。

 今すべきことは、税制優遇措置などを使って中国に移った企業を日本に戻すことです。特に、食料や医薬品は自国で生産できる態勢を整える政策が必要です。

 菅首相は「自助・共助・公助」と言いますが、自助ではなく政治の力で、私たちの生活を取り戻さなければなりません。(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2020年12月4日号