こうした解析結果を基に、研究チームはどんな場所でどの程度の感染が起きるのか予想する数理モデルを開発。10都市の3月8日から5月9日までの1日単位の感染者数は、モデルを使って計算した予測値と実際の数字がほぼ一致し、モデルの正確さが確認できたという。

 さらに、目的地別の感染の発生を予測すると、55万カ所以上ある目的地のうちわずか10%の目的地で全感染の85%が発生すると予想された。

 感染が起きやすい「スーパースプレッディング」な場所の筆頭が、前述の店員が給仕するレストランだった。シカゴではロックダウン中に休業していたレストランを再開すると、約1カ月で感染者が59万6千人増えると予測された。レストランに次いで感染が起きやすいフィットネスセンター(ジム)の3倍超で、他の都市でも同様の結果だった。

 研究チームは、「訪問客が多く、滞在時間が長い傾向があるため、感染の恐れが高いと考えられる」としている。

 英ウォーリック大学のティエモ・フェッツァー准教授は、8月初旬から9月初旬に英国内で発生したクラスターの8~17%は、英国版Go To イート事業に起因するのではないかと指摘する報告書を発表した。

 英国の事業は「Eat Out to Help Out(外食して飲食店を支援しよう)」と呼ばれ、8月3~31日の4週間にわたり実施された。

 事業に参加した飲食店では、月曜日から水曜日の食事とソフトドリンクの料金が、1回につき1人あたり最高10ポンド(約1400円)を上限に50%オフになった。割引した金額は政府が店に補助する仕組みだった。利用回数に制限はなく、報告書によると、延べ1億人近くが利用した。テイクアウトには適用されなかったため、全員が店内やテラスで飲食した。

■イートが経済に悪影響

 フェッツァーさんは、グーグルが提供する携帯電話の位置情報やレストランの予約サイトの情報、事業に参加した各飲食店が政府に申請した補助金の件数、感染者の統計、当時の天気を組み合わせて解析した。その結果、事業が始まって1週間以内に感染者が大きく増加し、終了後2週間以内に感染者が減少したことや、月曜から水曜のランチタイムや夕食時に大雨が降った地域では飲食店の利用が少なく、また感染報告も少なくなったことなどから、事業と感染者の増加には相関関係があると結論づけた。

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