『ドキュメント・東京外環道の真実 住宅の真下に巨大トンネルはいらない!』の著書がある元共同通信記者の丸山重威氏は、補償がないまま一方的に所有権を制限するのは財産権を保障した憲法29条に違反しているとして、こう話す。

「大深度法ができる前は地下鉄やビル建設などで、地下50~100メートルを工事する際、賃借契約が結ばれるなどしたこともあります。当時の国土庁の幹部がはっきり言っていますが、地上に住宅がたくさんあって交渉が大変だから、こうした法律をつくったわけです。地下深くの工事なら地上に影響が出ないということが前提でしたが、今回、実際に影響が出たとなると、その前提が覆る。地下空間を『使い放題』にしていいと言うかのような法律をつくったのは間違いだったのではないか」

 丸山氏の家も外環道のトンネル工事のほぼ真上に位置し、壁が落ちるなどしているという。

「こうした例が多数あるわけで、どうやって補償するのか。工事が影響したという立証責任がどちらの側にあるのかという問題も争ってくるのかもしれないですが、きちんと責任をとるべきだと思います」(丸山氏)

 NEXCO東日本によると、現在、ボーリング調査などを実施中で、年内には調査を終え、有識者委員会に諮る予定だという。

 外環道の工事は東京都世田谷区の「東名JCT」と練馬区の「大泉JCT」の約16キロの区間で、両側から掘り進められている。住宅が密集する市街地の地下を通過するが、再び地上に影響は出ないのか。「外環ネット」のメンバーで元地理教師の早川芳夫氏が言う。

「その土地特有の地層と工事方法が複雑に絡み合いますから、陥没はどこで起きるか予想できません。1度起きたことは2度目もあるのではないかと危惧しています」

(本誌・上田耕司)

週刊朝日  2020年12月4日号

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