住民らによるとその後、付近では家のヒビ割れ、タイルの剥落、コンクリートの隆起などの異変が続出したが、工事は続けられた。NEXCO東日本は事故後に住民説明会を開いたものの、工事に反対してきた市民団体「外環ネット」の籠谷清さんは不信感を募らせる。

「事業者が配布したチラシを持っている人しか会場に入れず、中に入れない住民もいた。報道陣も入れないなどの制限がかけられ、情報を隠そうとしている印象を受けました」(籠谷さん)

 NEXCO東日本の小畠徹社長は10月28日の定例会見で「大変ご迷惑をおかけした」と頭を下げたが、同社関東支社広報課によると、これはあくまで原因究明のための「ボーリング調査」や「周辺道路の封鎖」で住民に迷惑をかけたことへのお詫び。「陥没や空洞についてはまだ原因を調査中ですので、工事と因果関係があったかについては、現時点では申し上げられない」と説明する。

 工事は陥没に影響したのか。首都圏の地下構造に詳しい東京都立大学の鈴木毅彦教授(都市環境学部)はこう話す。

「陥没現場の地下40メートルは東久留米層という砂層で、多少硬い礫もまざっている。そこをシールドマシンで掘り進んだわけですが、砂層というのは固まっていても、削るとバラバラになる。礫を削るうちに予定以上に土をとりすぎ、地盤が崩れたのかもしれません」

 ただし、地下深くではなく表層に問題があった可能性や、表層と地下の工事の二つの要因が複合して影響した可能性もあるという。

■家屋への被害の補償はどうなる

 直接的な原因はまだわからないものの、今回の騒動で注目されている法律がある。全国で数多くの地下工事を手がけてきたトンネル技師の大塚正幸氏がこう話す。

「今回の陥没は、国や事業者側がなるべく触れてほしくなかった『大深度法』の問題点があぶり出されたという意味があると思います」

 大深度法とは、2001年に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」のこと。この法律により、首都圏と中部圏、関西圏での公共工事について、40メートルより深い地下なら用地の買収をしなくても使用できるようになった。事業者は工事を周辺住民に告知する義務はあるが、同意を得る必要はない。

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