掛け金は1千円から7万円までの範囲で、500円単位で設定できる。事業をやめる時には積み立てた分を退職金として受け取れる。加入できる年齢に上限もない。

「最大のメリットは節税効果。掛け金を全額、所得から差し引くことができます」(板倉さん)

 毎月、最大の7万円ずつ積み立てるとすると、年間の積立額は84万円。それが丸々、課税される所得額から差し引ける。たとえば、所得税と住民税を合わせた税率が30%の人は、84万円に30%を掛けた年間約25万円が節税できる。所得税の税率は稼ぎが大きい人ほど高い。その分、この制度を使うと節税のメリットは大きい。

 資金繰りが厳しくなったり、病気やけが、災害などに遭ったりした時には、お金を借りられるメリットもある。借りられる額は掛け金に応じて決まるので限りはあるが、比較的低金利なので困った場合の備えにもなる。

 ただし、途中で積み立てをやめたり、積み立てる額を下げたりすると、元本割れする場合があるので注意が必要だ。加入してから6カ月未満で解約すると1円も戻ってこない。20年未満でやめる場合は、元本割れする可能性がある。定年後に加入する場合は事業を手がける期間が限られる。節税のメリットをフルに享受するためにも、早めに加入を考えよう。

「無理のない金額で始めることが大事。途中で積立額を増やす分にはペナルティーはありません。また、儲けが出ていない時には節税の効果はありませんので、事業が軌道に乗ってから入るといいでしょう」(同)

 廃業や退職をして共済金を受け取る際に税金がかかることも、覚えておこう。受け取り方は退職金として一括で受け取るか、年金のように毎月受け取るかを選べる。一括で受け取る場合の税金は、退職金と同じ扱いになる。退職金にかかる税金は「退職所得控除」など有利な仕組みがあるので、基本的には一括で受け取ったほうがいいという。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2020年12月11日号より抜粋

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