「絶縁する」──。親やきょうだいにこう叫んでも、離婚のように紙一枚で縁は切れない。一度入ったら抜けられないループのようなもの、それが家族だ。「家族じまい」する人が増えているという。親との関係に苦しんだ3人の女性を紹介する。
文筆家で漫画家の小林エリコさん(43)は、父親と兄からの暴力を受け、母からも助けてもらえず、「機能不全家族」の中で育った。
酒飲みの父親の口癖は、
「誰のおかげで飯が食えると思っているんだ」
母親への面前DVは常だった。小林さんは声を潜めるようにして育った。母親には幼少時代に毎年カーネーションや肩たたき券を贈っていたが、「なんであんなに肩たたき券をくれていたの」と大人になってから聞かれた。
「気持ちが全然届いてなかったんです」
家庭の中に自分の居場所も夢を語れる場面もなく、進路も欲しいものも全て我慢して育った小林さんは今でも自分自身にお金を使うことが苦手だ。
「子どもは育った家庭環境で人生のほとんどが決まると思う。私は、親に自分の可能性を潰された。その恨みが今でも根強くあるんです」
貧乏な生活から抜け出せず、生きていくことに絶望し、30代の半ばに大量の薬を飲んで自殺を図った。退院後に実家で療養しているときに見舞いに来た父親に思わず感情が爆発した。私が病気になったのも人生がこんなになったのも全部お父さんのせいだよと吐き出した。すると父親はこう返した。
「誰のおかげで生活保護が今受けられると思っているのか。俺が(書類に)サインをしたからだ」
小林さんの中で何かがプツンと切れた。
「お父さんとは絶縁する! もう二度と会わない」。家族の縁を自ら切った。今、父親は71歳に、母親は69歳になった。二人はようやく離婚した。
今年5月、小林さんは『家族、捨ててもいいですか? 一緒に生きていく人は自分で決める』(大和書房)という本を出した。皮肉にも本を読んだ父親が小林さんに連絡をしてきた。あれだけ憎み、恨み続けた父親と10年以上ぶりにつながってしまった。会わない間に父親は大病をし、性格が少し丸くなっていた。とはいえ小林さんにはいつでも親を捨てる準備ができている。