減収が、住居喪失の危機に直結する──。そんな事態が起こりつつある。

 住宅金融支援機構のデータによると、自己資金なしでマンションを購入する割合は2014年度以降増加し、首都圏では全体の21%にものぼる。住宅ローン返済の余裕を測る「返済負担率」は30%を超えると余裕がなくなるとされるが、リーマン・ショック後の09年度には「返済負担率が30%を超える人」が全体に占める割合が全国で14.6%だったが、19年度は全体の13.1%、首都圏では17.5%だ。

 つまり、収入減をきっかけに住宅ローンが破綻する恐れのある人が、10人に1人以上存在するということだ。

 そしていま、新型コロナウイルスの影響により、収入減が相次いでいる。厚生労働省が11月25日に発表した毎月勤労統計調査によれば、9月の実質賃金は前年同月比1.1%減の26万9323円と、3月から7カ月連続で減少した。日本生命が10月に約2万5千人を対象に行ったインターネットによる調査では、約23%が給与が「減った」と答え、減少額は平均で約10万円にもなった。コロナ関連による解雇や雇い止めも、厚労省によれば、見込みも含め7万3千人に達した。

■外国人客減が大打撃に

 実際、住宅金融支援機構でのコロナに起因する返済期間延長やボーナス返済の見直しなどの承認件数は、3月から10月までの間に6531件にのぼった。収入の多寡にかかわらず、住宅ローンを支払えなくなるケースが続出しているのだ。

 都内在住の男性(45)も、コロナ禍での収入減がたたり、住居喪失の危機に直面している。

「仕事が見つからなくて、このままだとマンションを売って安いアパートにでも引っ越すことになりかねません」

 長年、外国人観光客向けのハイヤーの運転手をしていた。コロナ禍で訪日客が消え、仕事がなくなった。会社から別部署への異動を打診されたが、給与はそれまでの約35万円の半分になるといわれ、退職。月々の住宅ローンの支払いは約10万円で、10年ほど前に35年ローンで買った。

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